遺言書とは
一般的に遺言書は「自身の死後に法的効力を発生させることを目的に書き残す意思表示」と定義されます。
遺言書を「財産を分けるためのもの」とお考えの方が多いようですが、それは一つの効果にしかすぎません。
愛する遺族に残せる最後のメッセージであり、自分の意志をしっかりと伝えることによって、残された家族が迷うのを防ぐ効果があります。
お元気で、判断能力のしっかりしているときに作る、将来への準備のために作る書面と言えます。
遺言は、書いた人の死後にその効果を発揮するという性格上、法律に則った「遺言の方式」をきちんと守って書かれていて、初めてその効力が認められます。
宮田事務所では、遺言書の作成を積極的にお勧めしています。
大切なものだから慎重に考えてというのも一つのやり方ですが、考えている内に状況は変わります。
遺言書は1度作ったらそれで終わりというものではなく、常に変更できるということを念頭に「生活やお気持ちに変化があったら作り直せばいい」というくらいに考えて頂くのが宜しいかと思います。
相続手続きにおいては、遺言書は速やかに手続きの行える強力なツールです。話し合いを挟む必要が無いので、相続人の合意形成を待たずに手続きが出来ます。仮に遺留分を侵害した遺言内容であったとしても、記載通りに手続きを進めることが出来ます。(遺留分を侵害された者は損害額の請求が可能です)
※遺留分(いりゅうぶん)
亡くなった方の法定相続人が兄弟姉妹以外の場合は、相続財産の一定割合を取得出来るという権利があります。これを遺留分といい、遺言によっても奪うことのできない権利です。
遺言書の効果
相続手続の現場で様々なご相談を受けていると遺言書を残さずに死んでゆくことは「罪なことだ」と感じてしまいます。
1.遺産争いを防ぐ
誰にどの財産をあげるか指定。付言で最後のメッセージを残すことにより家族間のもめごとを回避し、遺産をめぐって家族に嫌な思いをさせなくてすみます。
2.相続手続きの負担を減らせる
相続手続きがスムーズになり、仕事や育児で忙しい家族の時間やおカネを節約できます。
おそらく相続人にとって遺言の最大の効果です。分割協議を経ること無く不動産の登記や、銀行預金を下ろすことが出来ます
遺言で婚外子への遺産分与を決めておくことによって妻や嫡出子は感情を交えずに相続手続を進めることが出来ます。
3.残された家族の生活を守る
高齢の配偶者や気掛かりな子どもに自宅や生活費などの特定の財産を残すことが出来ます。内縁関係の配偶者を守ることも出来ます。
4.気掛かりを解決できる
婚外子の認知や素行が悪い相続人を除く(廃除)こともできます。お世話になった人にお礼をしたり、慈善団体などへの寄付をすることもできます。
遺言書が無くお亡くなりの場合
相続人確定、相続財産確定、相続人全員による遺産分割協議書の作成の後に初めて財産の名義変更となります。
必ず遺言を書いておくべき人
1.子供の無い夫婦
夫婦に子供が無い場合に一方が亡くなると残された配偶者は単独で相続することは出来ず、故人の親や兄弟と遺産分割協議を行い相続手続を進めなくてはなりません。
2.連れ子とともに再婚した場合の配偶者
相手の連れ子と自分は親子関係がないことを知ってください。養子縁組をするとか遺書で遺贈するとかしないと結婚相手の子供に財産を残すことが出来ません。
3.前婚で子供のある人
この場合、前婚の子は法定相続人ですから遺言書が無いと分割協議に加わってもらわなければ相続手続が進みません。
何十年も交流の無い場合であっても「探し出して連絡して」遺産分割に納得してもらわなければなりません。
4.内縁関係のある人
内縁の妻や夫は相続人とはなりません。どのように愛情豊な関係を築いてきていたとしてもです。遺言で遺贈しない限り、たいていの場合は相続財産もなく他の相続人から財産分与を受けることも期待できません。
5.認知した子のある場合
本妻や嫡出子(本妻の子)ともめる可能性が非常に高いです。婚外子(認知した子供)の法定相続分も嫡出子と同じになりましたが、そんなことよりもきちんと遺言書で自分の気持ちを伝えておくことにより残された人間が救われるのです。
1.エンディングノートと遺言書の違い
昨今では手軽な終活として、エンディングノートが人気です。
突然の他界に備え、手持ちのノートや市販のエンディングノートに、ご家族へのメッセージ、口座の情報、希望の葬儀の形式、ペットの譲渡先などの情報をまとめる方が増えているのですが、エンディングノートには法的な効力を発揮できないものもあります。
(遺言書の効力を発揮できる書式がついているエンディングノートもあります)
エンディングノート…自分の情報や家族へのお願いをまとめたもの。
遺言書…民法上の定めにしたがって作成し、法的な効力を発生することを目的に書かれるもの。
きちんと効力を発揮するためには、民法上の定めに従い作成することが重要です。
自分で遺言書を作る(自筆証書遺言)場合の起こりがちなトラブル5選
1.形式違反で無効
一番怖いのがこれです。自筆証書遺言は本人の死後に効力を持つものであるという性格上その書き方に厳格なルールがあります。
- 原則全てを自書する(一部コピー等の添付可)
- 作成日を明記する
- 署名捺印する
ルールに従って書かれていない遺言書は無効です。
2.不明確な内容のため手続きできない
何を(例えば全ての不動産を)、どうする(妻に相続させる)、ということが明確に書かれていないと遺言書に従った手続きができません。
「〇〇に任せる」とか「△△に一任する」などという記載は遺言書おいては意味をなしません。
3.検認手続きが必要
自分で作る自筆証書遺言の場合、亡くなった後に家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があります。(保管所を利用する場合は検認不要です)
検認手続きの為には戸籍を集め、法定相続人を確定して裁判所に申立をする必要があり、思いのほか手間が掛かります。
4.紛争の火種に
「遺言書にさえ残しておけば財産のゆくえを自在に設定できる!」と思い込んで作ってしまうと、後々それが遺族同士の争いの原因になってしまうこともあります。
5.発見されず相続手続きにおいて活用されない
ご本人の死後、遺言書が発見されなければ、その遺言に基づく相続手続きが行われず、せっかく遺言書を作った意味が無いということもあります。
2.遺言書には種類がある?
遺言書には普通方式遺言として3種類方式がありますが一般的なのは2種類です。
1.自筆証書遺言
2.公正証書遺言
これに加えて秘密証書遺言という方式もありますが利用のメリットはほぼ無いと考えます。
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言どの方式でもその効力に違いはありません。
自筆証書遺言
作成方法
自筆証書遺言は、基本的に遺言者が全て自筆で書くことで作る遺言書です。
ご自分で全て作成出来るため費用が掛かりませんが、形式違反や遺言の内容の不備で折角の遺言書が効果を発揮できないということが少なくありません。
(2019年より財産目録や通帳のコピー、登記簿謄本など一部自筆以外のモノを添付する事が出来るようになりました。)
相続発生(被相続人の死)後
遺言書が発見されない(紛失)という危険性があります。
原則、裁判所の検認手続きが必要です。(検認を済ませないと手続きに使えません。)
2020年保管制度が開始されたため、この保管所を利用した場合は、裁判所の検認手続きは不要となります。
検認手続き完了後に遺言書に従って相続の手続きを行います。
公正証書遺言
作成方法
公正証書遺言は、公証役場で作ります。
一番信頼出来る遺言書の作成方法と言われています。遺言内容を、公証人・証人2名が確認しているため、遺言の内容の不備で無効になるようなことが非常に少ない方式だからです。
依頼する公証人の報酬、証人の費用などお金が掛かります。
相続発生(被相続人の死)後
遺言書が見つからない場合でも、遺言書を探し当てることができます。
遺言者の死後、全国の公証役場どこからでも、遺言書の存在を確認することができますし、その謄本を請求し手続きを進めることが出来ます。
裁判所の検認手続きは不要です。(遺言書に従いすぐに手続きを進められます)
※「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
※「証人」は、遺言が間違いなく本人のものであること、自分の意思によって正常な判断のもと作られていること、遺言の内容が本人の意思をきちんと表していることの証明に必要です。
①未成年者
②推定される相続人、受遺者(財産をもらう人)、これらの配偶者および直系血族(祖父母・両親・子・孫など)はこの証人になることが出来ません。
3.行政書士に頼めば行政書士が作ってくれるの?
行政書士は「代書屋」と呼ばれることもあるように依頼者の意思基づく書面を作ることが業として認められています。
ですが、遺言書の作成はその性質上、遺言者ご本人しか行う事が出来ません。
行政書士宮田事務所では、
1.ご本人のお気持ちをお聞ききしつつ、それを分かり易い言葉にする(起案する)
2.遺言内容が無効になることがないように、法的に則って有効とされる内容にする
3.残される親族に対する依頼者の思いを言葉にする
このような遺言書案作成のお手伝いが出来ます。
これをもとに、自筆証書遺言、公正証書遺言どちらでもお作りいただくことが出来ます。
またその後の手続き
自筆証書遺言の保管所利用の際の付き添い
公正証書遺言作成の際の公証役場への同行や、証人
相続発生時の遺言執行などもご依頼に応じて行います。
4.遺言作成の流れ
自筆証書遺言、公正証書遺言どちらであっても作成のための準備にはにはさほど変わりがありません。
宮田事務所がお手伝いしながら、遺言を作成する場合を例に、遺言書作成の流れについてご紹介します。
1.お話を伺います
どうして遺言書を作ろうと思いましたか?
どのような家族構成ですか?
どんなことが気になりますか?
等をお聞きしながら、ご希望に沿ったお手伝いが出来る様、ニーズの洗い出しを行います。
2.希望を確認します
どのような財産をお持ちで、それをどのように引き継がせたいですか?
遺産分割の内容として遺言書の内容に反映します。
葬儀のやり方や祭祀の承継者を決めますか?
遺言執行者(遺言書通りに手続きを行う人)を誰にしますか?
遺言の要素として遺言書に記載します。
残された家族にどのようなメッセージを残したいですか?
付言事項として遺言書に織り込みます。
※祭祀の承継者とはお墓を守る人のことです
※遺言施行者とは遺言内容を実現する役割の人のことです。ご家族を選んで頂くのも良いですし、遺言の内容によっては我々専門職を指定頂くことも少なからずあります。
3.自筆証書遺言にするか公正証書遺言にするかを決めていただきます
1.遺言内容はどのくらいのボリュームになるか?
自筆証書遺言であっても、公正証書遺言であっても大切な中身は変わりませんし、その効力も変わりはありませんが、全てを直筆で書くということは、記載内容が増えるほど、ご依頼者の負担になります。(2019年より財産目録や通帳のコピー、登記簿謄本など一部自筆以外のモノを添付する事が出来るようになりました。)
2.遺産総額はどのくらいか?
公正証書遺言の場合、遺産の価値に応じて、公証人に支払う費用は大きくなります。
3.定期的な書き直しを考えるか?
気軽に書き換えるために自筆証書を利用したいとか、高齢のため将来の書き換えは考慮不要とかを確認します。
4.遺言書を預る親族がいるか?
生前から遺言書の存在を親族に知らせるのか、内緒のままで死後初めて明らかにするのかは遺言書の方式を決める上で大きな要素です。
5.法定相続人間の仲は良いか?
紛争が起こりそうな場合では、自筆要所遺言にするか、公正証書遺言より慎重に考えることが必要になります。
このような条件をもとに、自筆証書遺言と、公正証書遺言どちらを選択するか考えてゆきます。
4.遺言書の起案をします
分かり易く明確に「誰に」「何を」「どれだけ」相続させるかを記載します。
ご希望に合わせて
祭祀の承継者の指名
遺言執行者の指定その他の遺言内容を記載します。
「付言」をしっかり記載します
※付言事項とは、法的効力を持たない記載事項といわれています。遺言書に絶対書かなければいけないというものではありませんが、遺言者の気持ちや想いを残された相続人に伝える最後の方法として宮田事務所でお手伝いする場合は必ず織り込んで頂いています。
例えば、家族へのメッセージ(感謝や、これからの家族円満のお願い)や葬儀やお墓の希望、自分がなぜ遺言を残すことにしたのか等々。これらを付言事項に記すことによって親族が故人の気持ちを理解し納得しやすくなります。
ご本人に内容を確認いただき、しっくりくるまで修正を行います。
公正証書遺言の場合はこの段階から公証人との調整を始めることもあります。
5.遺言書完成のためのためのステップ
5A自筆証書遺言の場合
4で起案した遺言書案をご依頼者に直筆で書いて頂きます。
書きやすい広めの罫線の入った紙をお渡ししています。
5B公正証書遺言の場合
遺言書案をもとに公証人と連絡調整を行います。
この時に、公証役場に行く(公証人に出張してもらうこともあります)日程を、本人、公証人、証人と調整します。
遺言書内容について公証人からの意見を反映させることもあります。
6.遺言書の完成
6A自筆証書遺言の場合
ご本人が遺言書を直筆で書き上げ、作成日を記入、捺印をすることによって自筆証書遺言は完成です。
遺言書はここまでで完成ですが、相続発生時(遺言者の死亡時)のスムースなお手続きのためには、完成した遺言書を保管所(管轄の法務局)に預けることをお勧めします。
保管所を利用することにより、相続発生時(遺言者の死亡時)裁判所の検認手続きを経ることなく遺言内容の実現のための手続きを進めることが出来ます。
6B公正証書遺言の場合
公証役場において、(出張の場合は、出張場所において)遺言者、証人の本人確認と共に遺言内容の確認をします。
内容に間違いがないことを確認した上で本人、証人2名が署名と捺印を行い、その後、公証人が署名、捺印する事で公正証書遺言が完成します。正式には「遺言公正証書」といいます。
この完成した「遺言書の原本」は公証役場に保管され、本人には「正本」、「謄本」と呼ばれる遺言書原本の複写版が発行されます。この「正本」や「謄本」は原本と相違ないものとして、公証人の署名と捺印がなされ、公証役場によって内容の真正が公証(公に保証)されているものであり、相続の手続きにはこの「正本」「謄本」を使って行います。
7.書遺言の保管や執行など
遺言書は作ってしまえば終わりというものではありません。
たいていの方は、遺言書が完成するとすごくホッとした顔をされ、大きな課題を成し遂げた満足感に浸られます。
もちろん、ここまで準備するだけでもとても素晴らしいことなのですが、せっかく作った遺言書、いざという時に正しく使われるための準備も大切です。
作成した遺言書を誰に預けるのか?
自筆証書遺言であれば保管所の利用をお勧めします。
相続開始後、家庭裁判所における検認が不要です!
遺言書の紛失・亡失のおそれがありません。
遺言書の破棄、隠匿改ざん等を防ぐことができます。
遺言者が希望する場合、死亡時に指定した方へ死亡時通知が送られます。
公正証書であれば執行者に「謄本」を預けるのが一般的です。
埼玉県の遺言書作成サポートは、宮田事務所へご相談ください。
遺言書はまずは作ろうとする事からはじまります。
どんな形式で、どんな内容で、どうやって、そもそも遺言書と遺書の違いは?などなど
疑問点にしっかりお答えし、不安なことを取り去ることから始めます。
パーソナルサポートオフィス 行政書士 宮田事務所は、オンライン相談も実施中!
遺言書に強い行政書士であり、身近な街の法律家である宮田事務所へぜひ一度ご相談ください。
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